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焚き火×ごはん炊き

 

3月26日ごはん炊きのワークショップのため三浦半島油壺にある胴網海岸へ行った。葉山周辺、二子山山系で森林環境保全や環境発掘活動をしている「森もり倶楽部(室伏氏)」主催のこの企画、テーマは「Light米Fire ~ここから始まる新しい1万年~」やや難解なテーマではありますが、僕はこんな風に理解した。
 
この列島での約2000年間(本格的な農耕の始まりから化石燃料に頼るようになった現代社会まで)で失ってきたもの、疎かにしてきたことを見つめ直し、それ以前(縄文時代の1万年間)にあった平和で安定していたとされる人の暮らしのエッセンスを用いながら、これから先の1万年の人の暮らしの在り方を身近な里山を通じて考えてみる。その暮らしの鍵となるのが火、それも木が燃えることで生まれる「光と熱」ではないかと森もり倶楽部の室伏氏は考えたのでないかと感じた。そこで、火のある生活を実践している焚き火の達人、寒川氏と羽釜炊飯大好きアンコメ店主が招集されたわけです。
 
焚き火の達人、寒川氏のホームグランドでもあるSTEP CAMP BASEのある胴網海岸でのワークショップ、まずは、ごはん炊きの前に燃料となる柴刈から。辺りを15分間柴刈するだけで、ホームセンターで買う薪に換算して3000円分くらい、今回炊く2釜分に必要な燃料のじつに10倍ほどの量が、あっという間に集まった。
 
次に水加減。今回は浸しておいたお米の重さを計り、その80%の重さの水をグラム単位で計量。それらを羽釜に入れ、じっくりその景色を見る。お米と水、いつも炊飯器の水線頼りの水加減が、こういう作業でおなじみのあの比率が網膜に焼き付くから不思議だ。
 
下準備ができたところで、柴刈した中から細かい枝葉を集め、それに焚き火から火種をもらい点火。「はじめチョロチョロ中パッパ」の作法で徐々に火力をあげていく。白米(松下×安米きぬむすめ)1.5升、玄米(静岡藤枝松下カミアカリ)1.5升、二つの羽釜はそれぞれ点火から8分ほどで沸騰した。
 
この後、火力を落として沸騰維持。「ブツブツいう頃火を引いて」釜の中の水がなくなり釜肌にご飯は触れるとこんな音が聞こえてくる。それと香ばしい香り・・・そのタイミングで置き火にする。この日の外気温は10℃前後、しかも微風のため、釜が冷めることも考慮していつもより置き火を多めにしてみた。ここから15分間は蒸らし時間、「赤子泣いても蓋取るな」である。
 
じつは、この一連の作業は、すべて参加者自身にやってもらった。僕は手を動かず、助言だけ。それでも大ハズレしないのは、木が燃える柔らかい熱量とそれを受け止める金属羽釜コンビのおかげ。木が燃える炎の温度は約800℃、その温度を受け止める金属羽釜との相性は抜群。このコンビで江戸時代中期に完成したこの炊飯技術を「炊き干し法」という。水加減、火加減で調理するだけのこの技術が育まれたのは、水と森が豊かなこの島国だからこそだと考える。こうやって実際にやってみるとそれがよく分かるのだ。
 
蒸らしが終え蓋を開ける時は、お約束のように大きな歓声が上がる。90℃近い温度差のある外気温に触れたご飯はみるみるうちに光輝き、目指す質感である外硬内軟、つまり外がツルっとコートされ、内はふんわり食感のご飯が完成した。遅れて20分後、もうひとつの羽釜で炊いていた巨大胚芽米カミアカリ(玄米)も炊き上がりました。
 
いよいよ実食、テーブルに並んだ二つの羽釜、「にこまる(白米)」と「カミアカリ(玄米)」囲み、歓談しながらと会食と思いきや、皆さん黙々と食べることだけに夢中です。「飯をおかずに飯を喰う」などとおっしゃる方もいるほど、想像していた以上の旨さにみなさん大満足の様子でした。こうしてワークショップは満腹になったところで終了。無事にミッションが果たせました。
 
閉会後はスタッフみんなで焚き火タイム。拾い集めた木々で暖を取りながらいただく日本酒の旨いことったら・・・星空を眺めながら尽きる事のない会話が延々と続き、一夜にして焚き火ファンになった週末でした。

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参加された皆さま、森もり倶楽部の室伏さん、STEP CAMP BASEの寒川さん、関係者の皆さま、おつかれさまでした&ありがとうございました。

2016年03月28日 [ 4272hit ]
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